6-7-4-5. 情報社会に登場した新規の悪
情報産業が飛躍的に拡大し、社会は、物の生産からして革命的に発展しつつある。その中で、否定的な方向において昨今目につくのが情報機器をつかっての新しい犯罪である。ネットでの情報を巧みに操作して、詐欺を企てたり、秘密の情報を詐取したり、情報機器を遠隔から止めて困らせ莫大なお金を出させるなどの犯罪が横行している。粗暴な犯罪ですらも情報機器をつかって巧みになって、これを企む主犯は隠れたまま、ネットで知らない者同士を集めてこれに犯行を行わせるようなことにもなっている。
インターネットは、出始めは、善だけであった。だが、これが一般化するとともに、犯罪の多くがネット犯罪となってきた。「知は力」だが、これほど悪においても、知が巨大なものになった時代はなかった。これまでの犯罪に情報機器が利用されるというだけでなく、情報が大きな力をもつので、情報自体を狙った犯罪が多発している。もちろん、そういう悪用を阻止するために、情報産業は、セキュリティーの方面で、悪を阻止するように種々の対策ソフトを考案し英知を発揮してもいる。一部の社会的組織が情報を乗っ取られ支配され機能マヒに陥るようなことがあるけれども、根本的には、悪用を阻止して、その上により確かで高度の情報利用が行われている。現在は、情報革命といわれる人類の飛躍の時代に入っている。
この情報社会においても、尊厳を有する人間世界のより良きもの、善への道の方が、圧倒的に進化し巨大な価値を産みだしている。生産においては圧倒的にそうで、遠隔からの制御情報で重機を動かし、工場は無人で動くのが珍しくなくなっている。消費の方面でも買い物も予約もスマホで済ませるのが普通である。貨幣ですら、これを無用にして仮想通貨(暗号資産)に代わろうかという大変革の時代になっている。窃盗犯は、仮想通貨という、万国通用で跡がつきにくく、しかも大金になるものを狙うには、相当に情報機器の利用に長けていることが必要となっている。悪事に便利なソフトなどには敏く、情報伝達のツールでテレグラムなど通信の秘密を守るに優れたアプリは悪用されているようである。だが、そこでは、悪用もあるというだけで、表では圧倒的に有益な情報が未曽有の大きさ・多さをもって行き来するようになっているのである。
デジタル化して、本などの情報が、あまりにも簡単にコピーできる時代になり、知を売る者には、死活問題になるようなことも出てきている。これを制限する著作権や特許権は、知・技術を発展させるには、効果があるということで、自然権となろうコピー権は、逆にコピー禁止権として現在は喧伝されている。しかし、コピー(禁止)権は、人為的作為的なものであり(したがって何年間かのみ禁止ということにしている)、パンや肉などの物とちがい、いくらコピーしても減らないという情報の本来的な特性とは合わない。情報にとっては、束縛であり、禁止は、いうなら必要悪である。簡単には閲覧もできなかった貴重な古書でも、今は、信じられないぐらい容易にウェブで自宅で読める時代である。絵画なども、美術館では細部は見えないものすらも、ウェブで詳細にみることができる。しかし、作家は、それでは、生きていけないということになるので、著作権等をもって保護している。もっとも、かれらも、隠して見せないようにしたいのではない。生活できるようになるなら、大いに公開することであろう。著作権は、なるべく使わず、コピー(できる自然)権を生かすようにしたいものである。