7-2-4-3. 苦難に耐え挑戦して、人類は、世界中へと広がった
ひとは、霊長類の中では、弱者で、おそらく、ゴリラやチンパンジーに森を追い出されたのであろう、草原に進出して、ハイエナも残した骨の髄を食べたり、草の根っこを食べて生き延びた。草原を彷徨うなかで、直立し手を創り出しこれを巧みにつかい、苦難を耐え忍ぶなかで生き延びるためにと知恵を大きく伸ばした。その間に、現代のホモ・サピエンスの生成となったようである。多様な生き方を身につけ、知恵をもって、未知の未来をも描き出し冒険心を抱けるようになり、出アフリカを企て全世界へと広がっていった。
その豊かになった知恵をもって、困難へ挑戦する忍耐力を大きくし、未知の想像の世界へとひきつけられていったことであろう。夢・想像と、現実の感覚世界とは、おそらく、今ほどの区別はなく、想像図にも、真に迫る感情を伴い得たことであろう。未来を想像して、ありありと豊富な獲物を描き出すことで、それの享受の快もかなりひきつけたのではないか。ユーラシア大陸への進出は、アフリカの自然環境の変動(氷河期・乾燥等)をもってのことが大きかったのかと思われる。新大陸でのマンモス等の大型動物の狩猟は、獲得すれば、その快は大きかったが、その狩猟は困難なことであった。マンモスの弱点は後ろ足だというような狩りの技術知を蓄積し、強く遠くに飛ばせる槍等の発明・発見をもってよりよい明日へと苦労を重ねることになったであろう。その寒冷(ヴルム氷期)の困難苦難から逃れることはできず、生き延びるための、衣服、家等に知恵をもった工夫を重ねて、苦痛から逃げず耐え忍んでいった。身近な困難・苦痛に駆り立てられて、豊かな想像力を踏まえ、獲物を追って、次々と新天地を開拓していったのであろう。
マンモス等の大型動物の狩猟は集団でもってはじめて可能になることで、緻密な連携や捕獲方法が工夫されねばならなかったはずである。言語の使用を、試行錯誤の困難を重ねて編み出し、この言語をもって知恵は飛躍的に向上し、個別感覚世界を超越して普遍的概念の理性的な人間世界を確立することになった。すでにアフリカにおいて、ひとは、直立し手を創造して言語使用を始めて、技術知を大きくし、対象知を飛躍的にしたであろうが、ユーラシアに出てからは、一層、集団での狩猟等の行動に関わっても言語は飛躍をもたらしたに違いない。自己理解の成立と自分たちの集団の結束の飛躍的向上である。言語が通じ合うということは、同一の超越世界の同一の理性存在であることを明かす。自然的には小さな数の群れしか成立しないが、ひとは、言語と想像力をもって同一の祖先(神)を語り一体となり、自分たちの集団の拡大を可能にし、その集団の結束を確かにして、巨大な集団としての力を発揮することへと進んでもいった。(想像力の見出した、自分たちを一つにできる)虚焦点となる神と王のもとに集団が組織だった巨大な一全体を形成したのは、おそらく農耕をもって一地域に定着してからであろう。